今日が最後の勤務日だという、その朝、出勤して間もない私のところに、Aさんがやって来た。
まだ彼女も来たばかりなのだろう。肩には自分のカバンをかけたまま、手には大きな紙袋を提げている。
「おはようございます。これなんですけどね、実は実家の母が、お菓子を作っている所で働いていて、私が『職場で辞める人がいるんよ』って言ったら、これを持たせてくれたんです。」と言いながら、その紙袋を私の方に差し出した。
驚いた私は、いえそんな、このような立派なものを頂くほどの事は何もしていません、とか何とか言いながら、遠慮がちにその紙袋を受け取ったが、中をのぞいたら大きな白い紙箱がはち切れそうに入っていて、本当に恐縮してしまったのである。
そもそも彼女は部署で一番勤務年数が浅く、私との付き合いも最も短い。
業務上、こちらから時々お世話になる事はあったが、私があちらのお世話をするという事などほとんど無かったのである。
ただ、辞める前になって、職場のある行事に一緒に参加する、というでき事があった。
空いた時間で自分の、仕事に対する姿勢や色んな思いについて、少し話した記憶はある。もう最後だからカッコつけずに、真心を伝えよう、そんな気分だった。
帰宅して、フタを開けたら、個包装された何種類もの、パウンドケーキがびっしりと並んでいる。1種類には金粉がまぶしてある。これは、貰い過ぎだろう…。でもどれもとても美味しかった！
Aさんに感謝！そしてAさんの御母上に感謝！！
