身内が緊急入院したときの話。
私は急いで、「入院時に必要な持ち物」を用意しなければならなかった。
こまごまとした身の回りの小物、洗面器に歯ブラシ・歯磨きやコップにスリッパ。
お箸やスプーンに、タオルやティッシュ。
取りあえず、「着替え」を買いに走った。前開きパジャマや下着などである。
市内のS衣料品店に行った。
そこでは、下着や靴下やパジャマなどがお安くなっていたのだけれど、前開きパジャマも、暖かい裏地のついた冬物が、たくさんあって、「3着以上」必要だった私には、とても好都合だった。
気がせく中で、色々と見て回り、目的の物を全て買物カゴの中に押し込み、レジの方へと向かった。
先に、2~3人並んでいたので待つ。
レジは、2台。
出口に近い方のレジが空きそうになったが、ふと後ろを見ると、年配の女性が靴下の3足組を一束だけ握って立っている。
私は「先にどうぞ」と言って、後ろに並び直した。
私は、たくさん買うから時間がかかる。待たせるのも申し訳ない気がしたから。
そうして、私の番になった。
冬物の前開きパジャマは、えらくかさばる。
それが3着だし、その他にも下着やソックスなどがたくさん。
私は、でも頼んだ。
レジ係の若い女性に、「すみませんが、このタグとか値札を外してもらえませんか?身内が急に入院して、すぐ持って行かないといけないんです」
するとその女性は、「あ、いいですよ」と言いながら、テキパキと会計の処理を済ませると、すぐにハサミを出して手早く、でも丁寧に、切り取っていく。
何だか、真剣な表情。
ちょうど、私の後ろには誰も並んでいなかったのが、幸いだった。
そして、「はい、どうぞ」とニコッと頬笑みながら、渡してくれた。
「ありがとうございます!助かりました!」
何だか、涙が出た。
レジ係の女性が、女神様のように思えた。
人間、弱っている時に優しくされると泣けてしまう。
ちょっとした事かもしれないが、「ちょっと嬉しかった事」を、忘れないようにしようと思う。