以前、息子と行った旅行中の出来事で、時々思い出すことがある。
目的の観光地に行くため、電車から乗り継ぎ、バスに乗り換えた時のこと。
座席は満席で、立っている人もたくさん居た。
後部入り口から、息子が先に何とか乗り込み、すぐ横の座席の前に立った。
私が後に続き、同じく隣に立った。
するとすぐさま、目の前の座席の男性が立ち上がり、私の方を見て、「どうぞ」と言わんばかりに、手のひらを上に向け、空いた自分の席の方へと促すのである。
まるで「お嬢様、どうぞこちらへ」とでも言っているかのような振る舞い!
驚いて顔を見上げると、何とそこには白人男性が立っていた!
若い!しかも、イケメン!ただし、無言!
「な、な、何だ?このシチュエーションは?」と思いながらも、「このご好意はありがたく受けるのがいい」と感じ、「Thank you」と言いながら、その席に座った。
できるだけエレガントに腰をかけたのは、言うまでもない。
もしかして、ちょっと頬を赤らめていたかもしれない。
席を譲ってくれた、その白人男性は、ずっと私の前に立っていたのだけれど、少しの間、私は見とれてしまった。
その白人男性は、普通にシャツとジーンズ姿なんだけど、とても細くてキャシャな感じ。
短めの髪に、綺麗なお顔。
短く切りそろえられた手の爪全てに、暗めの色の赤いネイルが…
ミュージシャンか何かか?と思ったけれど、今はネイルくらい、男性でも普通にする時代か…
このくらいで驚いてはいけない。
やがて目的地の近くで、バスを降りる。
ここで降りた人は皆、目的地が同じ。
私達親子が歩いて行くと、後から追い越して行った数人の外国人グループの中に、あの親切な白人男性が居た!
みんな仲良さそうだった。仲間と一緒に旅行してるんだね。
「ありがとう!無事に旅を楽しんでね!」と、心の中で声をかけた。
私はバスを降りる直前まで、自分が「レディ」扱いされたようないい気分で居たのだけれど、実は気づいてしまっていた!
バスを降りるために、席を立ち上がって何気に振り向くと…そこは…その席は…「優先席」だったのである!
そう、いわゆる、「高齢者」や「身体の不自由な方」のための、アレである。
私は外国人の目から見て、「充分に高齢者」だったのか?…愕然とする!
でもその時の私の服装は、ブルージーンズにライトダウンジャケットだったし、職場でもいつも、実際より10歳くらい若く見られてたのになー…
ああそれなのに、それなのに…ショック!
いや、単に「年上の女性だから」って事で、席を譲ったんじゃ?(希望的観測)
だって、「優先席」の表記には英語もあるけど、年齢制限までは明記されていない。
きっと彼は、「レディファーストの国」から来たんだと思う。