今年最後に行く、美容室。
いつもの美容師、Aさんにお願いする。
任せて安心だから、ホントは静かに雑誌を読みたい。
そうでなければ、寝たふりしてボーッとしているうちに、本当に眠ってしまうワタクシ。
それなのにAさんの軽妙なトークに、いつの間にか引き込まれ、「ガハハハ」なんて大きな声を出して笑っている。
今日は、お客さんが少ない日なのか、午後は私の後は誰も来ない。まあ貸し切りって事で。
変わらない楽しい会話の中で、ふとAさんの昔話が始まった。
母親が病気がちで、自分が学生の頃に亡くなった。
それで高校時代は、ほぼ毎朝自分で弁当を作って通学した。
お正月に、今はもう亡くなった父親が、たくさんのおせちや煮物を作ってくれた事を、毎年年末になると思い出す。
新米美容師の頃は、年末年始の休みなど取れず、取りたいとも言えず、ただひたすら働いた。
同じ美容室の美容師Bさんにも、以前聞いた事がある。
何十年も前、住み込みで美容師見習いをしていた時期があったと。
今の若い人達には、考えられない世界。
だから、見習いの若い子には強い事は言えない。モラハラ、パワハラなんてことになったら大変!
年末であろうと、休みは取るし…いや実際取ってよい事になっているのだけれど。
「時代が違うんだよねえ。私達は昭和の世代だから…」と、AさんとBさんが顔を見合わせて、うなづき合う。
私が帰り際に、AさんとBさんの顔を見ながら「本当に大変なご苦労をされて、資格を取って頑張って来られたんですねえ!これからもずっと、お元気で頑張ってくださいね。」
そう言うと、Aさんの目がちょっぴりうるんだ。
「今年も一年、ありがとうございました!よいお年をお迎えください!」と深々とお辞儀をされたので、こちらも「こちらこそ今年一年お世話になりました。」と頭を下げて、店を後にした。