前回の記事、「日光・鬼怒川旅行記」に書いてなかったこと。
鬼怒川から、東京まで戻って来た日、想定外の事が起こった。
その日は東京で一泊する事にしていたので、東京駅で新幹線を降りてから、山手線に乗り換え、ホテルに向かう手はずになっていた。
ところが途中で、息子がどこかに電話している。
ボソボソと、何を話しているのか聞き取れない。
電話を切った息子が顔を上げ、私に向かって言う。
「お母さん!ホテルに行くなら、◯◯駅で降りるんだけど、ひとつ手前の△△駅で降りる事にしたから!」
「ええーっ!?な、なんで?」
「いや実は△△駅の近くに、ピアノのレッスン室をレンタルできる所があって…」
「えええええーーっ!!!?ピアノぉ??」
「いやあ、ネットで探してたら、ホテルの近くにあるのが判って…聞いてみたら時間枠で、ひとつ部屋が空いてるって♪ だから急いで予約したんだよ!今から行くと丁度いいんだ!」
ななな、なんでピアノなのか…。
実は、前日まで泊まっていたホテルのロビーの片隅に、アップライトピアノ(よく家庭にあるタイプ)が置いてあったのを見た時、私は思わず「あ、ピアノだ!」とつぶやいた。
なぜなら、私は小学生の頃までピアノを習っていたのだが、家庭の事情でレッスンをやめてしまい、ピアノも姪が習うと言い出した時に、兄宅にあげてしまったため、今さらピアノを弾きたくても弾けない、という経緯があったからだ。
ってゆうか、本当はピアニスト並の腕があるなら、ホテルのロビーであろうと、「ちょっと貸してください」って言って平気で人前でも弾けただろう。
でも悲しいかな、そんなレベルじゃない。第一、最後に鍵盤に触れたのは、いったい何十年前だ?
でもわざわざ予約を取ってくれたんだ、行ってみよう。
行って驚いた!
個室がいくつもあり、ドアはガラス張りだが、全て完全防音設備となっている!
受付では、ピアノ教本もお借りできるとあって、私は懐かしの「ブルグミュラ-」をお借りした。
1時間の予定だった。
息子は受付の前で待っている、と言う。
私が入った部屋には、グランドピアノが置かれ、ドアを閉めればもう、そこはまさしく「独壇場!」だった。
※【独壇場とは】
集団の中でひとりだけ群を抜いて活躍しているさま、その人だけが思うままに振る舞い他の追随を許さないさま、を意味する表現。(Weblio国語辞典)
ま、私の場合は「ひとりだけ落ちこぼれて活躍できず、人目に触れれば恥ずかしいが、誰も見ていないところでは思うままに振る舞い、他の詮索を許さないさま」とでも言っておこうか…
そうなんだ。誰にも聞こえず、誰にも見られていない。
どんなに間違えても笑われないし、恥ずかしくもない!
なんていいところ!
(次回につづく)